NATURE(12 August 2004号)より
'Slipshod approvals taint Japanese animal studies'



                                          実験動物福祉担当 川端 賢

 市民団体「動物実験廃止・全国ネットワーク」が行った調査により、大学などの研究機関で作成されている動物実験計画書に不備や記載漏れがあるにもかかわらず、内部の委員会で承認され実験が行われているという指摘がありました。このニュースは国内のメディアのみならず英科学雑誌NATUREでも取り上げられ、ALIVE・地球生物会議代表の野上ふさ子氏がこの問題に対するコメントをされています。
 以下に要約を引用致します。

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 ある研究者においては、自分が行う動物実験申請書を自ら承認できる立場にある。別の申請書では63匹の動物を使用する事が記載されているにもかかわらず、どの動物を使用するのか記載がされていない。
 環境省はこの現状を、「書類手続き上の誤りであり、実際に動物が虐待されているという事ではない」としている。一方、野上氏は「管理体制のあいまいさが実験室での動物虐待を覆い隠している」と言う。また氏は、欧州や北米のような政府による動物実験施設の登録制度の導入や、強制力のある法律と監視機関の必要性を主張している。
 動物を扱う研究者達は氏の言う動物虐待の可能性を否定し、所属機関によって規定された高い福祉基準を順守している事を強調している。しかし日本学術会議は法律強化の必要性を認めており、法律を履行させるためのガイドラインと外部認定システムの創立を促しているのも事実である。
 環境省は、動物愛護管理法の改定には文部科学省、厚生労働省、環境省の合意が必要であり、現実問題としてとても困難である、としている。

                                                        訳:川端
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 動物実験に対する動物愛護管理法および実験動物基準のあり方に問題点が指摘されるなか、施設独自の指針に従って動物実験を行っているのが各研究機関の現状だと思います。日本実験動物技術者協会としても、平成15年12月より法律の改正を検討する委員会を発足して環境省へ積極的な提案をするとともに、動物福祉委員会を設立して動物福祉関連の情報の収集および提供に取り組んでいます。


  引用: Cyranoski, David. 2004. Slipshod approvals taint Japanese animal studies. Nature,
       430(12August, 2004):714.





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